第13章 ブラックインパクト
「結局、場所は分からずじまいか……」
ジェイムズさんが残念そうに言った。
「うん……何かさっきから音が聞こえづらくなっているし……」
「手掛かりはどこかの橋だということだけね……」
コナン君と私も頷く。
土門氏の後援会事務所に問い合わせても教えてくれない。あまりにもしつこいため、不審者だと思われたらしい。
「やはりベインBのベインを解かねば、この悪い風向きは変わらんようだな……」
……風向き?ベイン……風向き……そうか!
「ベインと言えばvain……『無駄な』『くだらない』『自惚れが強い』という意味だが……」
「そんな地名、この東京にあったかしら?」
ジェイムズさんとジョディ月が頭をひねっている時、私とコナン君が同時に話した。
「いえ……vainじゃなくって……」
「vaneのベインだよ!」
ジェイムズさんが後部座席を振り向く。
「え?風向計や風車の羽根のベインかね?」
コナン君と私はこくりと頷いた。
「ああ……それと同時に弓矢の矢羽を意味する単語……」
「この辺で矢羽を暗示する地名って言えば……」
「「鳥矢町!」」
2人は息ピッタリに言った。
「つまりベインBは鳥矢大橋ってわけさ!」
コナン君がそう言うと、ジェイムズさんが嬉しそうに言った。
「それは朗報だ!暗殺予定時刻の16時まであと2時間もある!」
「やっと彼らの先手を取れるわ!」
その言葉に、私はこくんと頷いた。
「彼らは男3人、女3人の計6人。恐らく、キールとベルモットはバイクに乗っているはずよ。残りの4人は車2台に分乗して、その内1台はポルシェ356A……」
ジェイムズさんの顔が厳しくなった。
「とりあえず、捜査官の車を至急その橋に向かわせて……その橋に通じる全ての道を抑えるとしよう……」
「一網打尽にするんですね!」
ジョディさんもキリッと表情を引き締める。ジェイムズさんが悪人ヅラになった。
「いや……気配を殺してこっそり背後に回り……1人ずつ確実に釣っていこう……」
うーわー怖い顔してるよこのオッサン。私は小さく苦笑した。