第12章 黒の組織と真っ向勝負 満月の夜の二元ミステリー
私はきょとんとした。するとベルモットは先ほどまでの冷静な表情を崩し、私と蘭ちゃん、哀ちゃんに銃を向けた。
ベルモットが何を言っても動かない3人に、ベルモットは痺れを切らしたように叫んだ。
「Move it, Angel ! Russian ! 」
冷静さを欠いた彼女の隙をついて、ジョディさんがベルモットの右腕を撃ち抜いた。
「ら、ライフルの死角は取ったわ……。銃を捨てなさい!さもないと次は頭を……」
そこで、シャコ!と言うショットガンのポンプ音がした。
ベルモットがニヤリと笑う。
「OK、カルバドス……挟み撃ちよ!さあ貴方愛用のそのレミントンで……FBIの子猫ちゃんを吹っ飛ばして……」
だが、そこにいたのはカルバドスではなく──
「ホー……あの男、カルバドスって言うのか……。ライフルにショットガンに拳銃3丁……どこかの武器商人かと思ったぞ……」
「あ、赤井秀一!?」
「赤井さん!?」
ベルモットと私は同時に表情を変えた。
「もっとも、両足を折られて当分商売は出来んだろうがな……」
「シュウ!」
ジョディさんが彼の登場に心底ホッとしたような表情をする。
「まぁカルバドスは林檎の蒸留酒……腐った林檎の相棒にはお似合いってトコロか……」
「腐った林檎?」
ベルモットが怪訝そうに問うた。赤井さんがニヤッと笑いながら答える。
「アンタに付けた標的名だ……大女優シャロンが脚光を浴びたのは、舞台のゴールデンアップル!あの時のままアンタは綺麗だが……中身はシワシワのラットゥンアップルってな!」
「くっ!」
ベルモットがとっさに赤井さんに銃を向けた。だが赤井さんはベルモットに非情の散弾をぶちまける。ギリギリの所で殺してはいないらしい。人間離れしたその業に、ただ驚くばかり。
敵わない、と判断したらしいベルモットは、コナン君を連れてジョディさんの車で逃走した。そしてバックミラー越しに乗ってきた車のガソリンタンクを撃ち抜いた。
「……カルバドス!」
私はハッと気づき、慌てて駆け出した。ベルモットに見捨てられたと思ってるかもしれない。彼はベルモットに惚れていたから──
「カルバドス!」
私が行くと、カルバドスは「ははは……」と空笑いしていた。
「オレ……見捨てられたよ……ベルモットに……利用されてたんだな……」