第12章 黒の組織と真っ向勝負 満月の夜の二元ミステリー
「バカな女……このボウヤのカワイイ計画を台無しにして……わざわざ死にに来るなんて……」
ベルモットは哀ちゃんに銃を向けたまま言った。哀ちゃんが追跡眼鏡を外す。
「ただ死にに来たんじゃないわ……全てを終わらせに来たのよ……たとえあなたが捕まっても、私が生きている限り……あなた達の追跡は途絶えそうにないから……」
私は顔をしかめた。
馬鹿野郎。
「その代わり約束してくれる?私以外、誰にも手をかけないって……」
「いいわ……このFBIの女以外は助けてあげる……」
ベルモットはちらりとジョディさんを見た。彼女はどうやら腹部を撃たれたらしく、車に寄りかかって苦しそうにしている。
ベルモットはまた哀ちゃんに視線を戻した。
「でも、まずはシェリー、貴方……。恨むのならこんな愚かな研究を引き継いだ貴方の両親を……」
ベルモットがそこまで言うと、ジョディさんの車のトランクがボコッと音を立てた。
「!?」
思わずそちらを見てしまう。と、ドガ!と大きな音を立ててトランクが開いた。そこから彼女が飛び出して来る。
カルバドスが彼女めがけて撃つ。「待って!カルバドス!」とベルモットが声を上げるが、彼には届いていない。私はチッと舌打ちをして、カルバドスの方に向けて銃を撃った。もちろんわざと外して。
「待ってカルバドス!」
銃弾の雨は止んだ。“彼女”が灰原の上に覆い被さる。その人物は──
「蘭ちゃん……!」
私は思わず2人の前に両手を広げて立ちはだかる。
「ルシアン……どういうつもり?」
ベルモットが怖い顔でこちらを睨んで来る。私も負けじと睨み返した。
「私……人殺しはしたくないの。見殺しにもしたくない」
そして、ふっと表情を緩める。
「……友達なら余計にね。そうでしょ、ベルモット?」
私の言葉に、ベルモットは少しどきりとしたような顔になり、呆然と呟いた。
「……ま、真凛……?」
「え……?」
ベルモットが私の母親の名を呟いた気がした。