第12章 黒の組織と真っ向勝負 満月の夜の二元ミステリー
《私が貴方に目を付けたのは、貴方が母親の棺の前で言ったあの台詞……『A secret makes a woman woman』。胸を高鳴らせて調べたら、見事に一致したわ……貴方が私の父を自殺に見せかけて殺した時に……不自然な落ち方をしているのを直そうとして掴んだ父の眼鏡……。そのレンズに付着した指紋と貴方の指紋がね!》
だが疑問が残った。20年も前の事件の被疑者にしてはベルモットは若過ぎる。そこで、ある人物の指紋と照合してみた所、背筋が凍りつくような事実が判明したのだ。
《貴方が母親のシャロン・ヴィンヤードと同一人物だってことがね!》
(……!?)
シャロン……って、N・Yで会ったあの有名女優……!?
《そしてやっと見つけたってわけ……貴方の逮捕を妨げていたその謎を証明してくれそうな証人を……》
そして、ジョディさんは張り込んでいるらしい仲間達に《You guys! Come out and hold this woman!!》と声をかけた。要するに、ベルモットを捕まえろ、と言っているのだ。
《日本警察から身柄を引き取ったら吐いてもらうわよ、何もかも……まぁ貴方が黙秘し続けてもいずれこの子が……》
ジョディさんは最後まで言い切らなかった。言い切れなかった、と言う方が正しいかもしれない。
ダァン!と銃声が聞こえた。そして、ベルモットが《Thank you calvados……》と誰かに声をかけた。
ジョディさんが撃たれたのか。まさかベルモットがカルバドスを連れて来ていたとは……。迂闊だった。彼女が1人でここに乗り込んでくるはずがないのだ。
《ど……どうして?》
《仲間をここに張り込ませ……私をおびき寄せたつもりでしょうけど……私、2時間前に一度ここへ来たのよ……貴方に変装して……そして貴方の声でこう言ったわ……》
『This is it tonight! Come back tomorrow! 』