第12章 黒の組織と真っ向勝負 満月の夜の二元ミステリー
私はイヤホンから聞こえる話を元に、頭の中で情報を整理した。
彼女が秘密裏に追っていたベルモットは父親の敵でもあり、20年前に両親はベルモットによって殺害されていた。
彼女の父はFBI捜査官。組織に関する資料を集めていたことで彼らに目をつけられ、それを隠滅するために屋敷に放たれた火によって両親が死亡。
その現場にはまだ幼いジョディもいたのだが、放火される前に偶然オレンジジュースを買いに出かけていたため、難を逃れていた。
それからは、父親の仲間の勧めで証人保護プログラムを適用、名前と住所を変更し別人となった。そして彼の後を継いでFBIの捜査官となりベルモットを追っていた──らしい。
それにしても……
(英語多すぎ!)
私は誰かにツッコみたくなった。
ペラペラとネイティブアメリカンの発音で喋らないで!英語追いかけんのに必死だったわよ!
《ここは日本……郷に従って日本語で話しましょ?FBIの……ジョディ・スターリング捜査官?》
それが彼女の本名か。その間にも、2人の張り詰めた会話は続く。
《さすが千の顔を持つ魔女ベルモット……その変装能力があれば、どこでも侵入できて調べ放題ってわけね……》
《貴方こそよく気づいたわね……Dr新出の変装に……》
ピンと張りつめた空気の中で、笑って会話をしている2人の姿が目に浮かぶ。
《分かるわよ……大した病気でもないのに、お忍びの女優クリスとして素顔であの新出病院に通い詰めてる姿をみれば……彼を殺して成り済ますつもりだってことはね!》
《じゃあ、もしかして私の車の目の前で家族を乗せた彼の車がガードレールを突き破って海に沈んだのは……貴方の仕業だったとか?》
《ええ……殺される前に事故で死んだように見せかけたのよ……車が海に沈んだままにして……。彼が死んだことを誰も知らなければ、貴方がDr新出として立ち回りやすいから……》
だがその車に乗っていたのは、酸素ボンベを背負ったジョディさんの仲間。本物の新出は先生は遠くで平和に暮らしているそうだ。
《そして貴方は、我々の思惑通り新出病院に居座って何かを調べ始めた……その何かは、病院の貴方の部屋に忍び込んだら一目瞭然だったわ……。ダーツの矢で串刺しにされた20歳前後の赤みがかった茶髪の女性……あの写真の女性を見つけ出して消そうとしているってね!》
「!!?」