第2章 スコッチ
「では彼女は君に任せたよ、バーボン」
赤井は色黒の青年──バーボンさんに私を任せ、その場を去った。
「君には聞きたいことがある。付いてきてくれるかい?」
「私もあなたに聞きたいことというか……確かめたいことがあるので、出来れば2人きりの場所がいいです」
「なら車で話そう」
手短に段取りを決め、バーボンさんの車──白のRX-7に乗り込んだ。
「まず……なぜ君があそこにいた?」
「散歩してたら、たまたま2人を見かけたんです。それで追いかけたら──ああいうことに」
簡潔に説明した私にあまり納得の言っていない様子のバーボンさん。
今度は私から質問した。
「私も訊いていいですか?スコッチさんとはあの黒ずくめの人達の仲間同士なの?スコッチさんはスパイだったみたいだし……あなたも一緒なんですか?黒ずくめの人達の所に潜入してるの?」
「!!?」
バーボンさんの顔色が明らかに変わった。私は構わず言い募った。
「あのFBIの赤井さんとは明らかに馬があってなさそうだったし……公安かCIAの人?」
そこまで訊いてみると、はぁー、と大きくため息をついて、バーボンさんは口を割った。
「……そこまで分かっているなら隠す必要もないだろうな……」
それから彼は話し出した。
自分が警察庁の公安警察官だということ、スコッチさんは警視庁公安部所属の公安警察官で、所属は違うが警察学校からの同期であり、親友であったこと。
スコッチさんから「正体がバレた」と連絡を受け、慌てて彼の元に向かったら──スコッチさんの死体と共にいる赤井さんと私に遭遇したということらしい。
「ふぅん……。ねぇバーボンさん、名前は?」
「安室透だ」
「へぇ、本名は?」
騙されたふりをして私が訊くと、安室さんはふっと息を漏らした。
「君に嘘はつけないようだな……。本名は降谷零だ。君の名前は?」
「瀬里奈。工藤瀬里奈だよ」
遅くなった自己紹介も済ませ、安室さんもとい降谷さんが私に向き直った。
「だが……君は組織のことを何かしら知っているようだが?」
「……話さなきゃダメ?」
おどけてそう言うと、降谷さんは「当たり前だろう」と言わんばかりのしかめっ面だった。