第12章 黒の組織と真っ向勝負 満月の夜の二元ミステリー
車の中は静かだった。
私が耳に挿しているコードレスイヤホンからは、ジョディさんと哀ちゃん──コナン君の会話が聞こえていた。
《ねぇ……。1つだけお願い……聞いてくれる?》
私は静かに聞いていた。声と音だけでは、彼らがどんな表情をしているのかは分からないが、私はフフッと小さく笑った。
「……何笑ってるの?」
「あ、ごめん出てた?」
私は少しニヤつきながら言った。
イヤホンから、誰かがドアを閉める音が聞こえた。
《Ohどーしたんですかー?Dr新出!》
ジョディさんの声がした。
ということは、先ほどの音はジョディさんか。と、また「バン」というドアを閉める音がした。
《それはこっちの台詞です!その子をどうするつもりですか!?》
これは新出先生。
《NoNo!ちょっとドライブしてただけね!私、あなたと違ってーとってもとっても暇ですからー……》
《暇?》
新出先生が怪訝そうに言った。
《Dr新出、もうすぐ殺人事件の裁判ね!ちゃんと証言しなきゃいけませーん!》
「殺人事件……?」
私は首を傾げた。新出先生が関わった事件──私は、前にベルモットに見せてもらった調書をざっと頭の中で再生する。
《本当はー……お手伝いのひかるさんが引き金を引いてー……あなたの父親(ファーザー)を殺したことを隠してね……》
ああそうか。私は合点がいった。いつかの新出院長殺人事件だ。バスルームで院長が感電死したとか何とかの……。
《ひかるさんが引き金?》
《とぼけてもダメね!私、毛利探偵にこっそり本当のこと聞きましたー!》
本当のこと……?調書に書いていないことか?私はハンドルを握りながら怪訝に眉をひそめた。
《何を言っているんですか!?あの事件の犯人は、僕の義理の母……それに死因は感電死、拳銃なんかじゃありませんよ……》
新出先生がそう言うと、ジョディさんがいきなり笑い出した。HAHAHA、と米国風に高笑いで。
《な、何なんですか?》
《Oh,Sorry……私が今言った引き金とは、電気のブレーカーのことね……》
そしてジョディさんは話し始めた。