第12章 黒の組織と真っ向勝負 満月の夜の二元ミステリー
「……あ、動いた」
工藤邸に残っていた女がぼそりと言った。コナン扮する灰原がらジョディに連れられて行く。そして、その後ろからもう1台──新出の車だ。
「これはこれは……本当に彼女を殺したいのね」
女は、あははー、と空笑いした。新出がベルモットの変装だということはもう既に知っている。
2人が阿笠邸から離れてからしばらくした頃、──「えっ?」
女は意表を突かれたようにおかしな声を上げた。
「何で……哀ちゃんが……?」
女は慌てて家を出た。車を阿笠邸の前に乱暴に停める。
「っ!?」
「何してるの哀ちゃん!家にいなさい!」
「瀬里奈……さん?」
灰原は女の名前を呟いた。
女──瀬里奈はギッと眼光を鋭くする。
「バカなのあなた!?彼らの狙いはあんたなのよ!?みすみす死にに行くつもりか!」
口調が荒くなった私に哀ちゃんは驚いたように目を見張ったが、すぐに首をふるふると横に振った。
「私が生きている限り……彼らは私を追いかけて来る。もう、びくびくしていくのに疲れたのよ」
「だからって……!」
私はなおも言い募ろうとする。だが哀ちゃんの目を見て、本気なんだと感じてしまった。
はぁー、と大きくため息をつく。
「……分かった。行く場所、教えて?連れて行ってあげる」
私は一応折れた。哀ちゃんもホッとしたような顔になって、車に乗り込む。
だが私は、心の中では哀ちゃんを死なせるわけにはいかないと固く決心していた。
誰も……もう誰も、殺させはしない……!