第12章 黒の組織と真っ向勝負 満月の夜の二元ミステリー
──パーティ当日の夜。
ある1人の女が、カーテンのぴっちり閉まった工藤邸の窓から、隣の阿笠博士宅をじっと見つめていた。
「うまくやりなさいよ……」
女はぼそりと呟いた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
その頃、横浜の港では──
招待状を受けた毛利小五郎と、その同伴である鈴木園子が受付の列に並んでいた。
その後ろに控えるは、メデューサの仮装をした女と、全身包帯だらけの男。
男が先に受付に辿り着き、名前を書く。
『工藤新一』
受付嬢がパッと顔を明るくさせた。なぜならその名前は、かの有名な高校生探偵の名前だったからだ。だが男は表情1つ変えず、奥に控える船に乗り込む。
彼が乗り込んだのを確認した後、女も招待状を渡して名前を書いた。
『工藤瀬里奈』
「あれ、工藤様のお連れではないんですね?」
「ええ、個別に招待状が来たから……」
女はそう言って笑う。
そして先ほどの包帯男を見つけ、すれ違いざまに呟いた。
「頑張ってね……平次君」
男もニヤリと笑う。
「分かっとるで」
殺人は起こさせない。起きたとしても、彼が必ず解決する。女はそう確信していた。