第12章 黒の組織と真っ向勝負 満月の夜の二元ミステリー
──瀬里奈side
夜。私は閉め切ったカーテンを少しだけ開け、外を確認した。案の定、“彼”はこの家に来ようとしている。
「来たわ。めちゃめちゃ警戒してる」
私が後ろに控えている女にいうと、女はフッと笑った。
腕時計型ライトの光がチラチラと見え隠れする。もうすぐ来る──来た。
彼がドアに手をかける。女はドアの死角に立ち、彼を待ち伏せた。
警戒した様子でドアを開けた彼に──水鉄砲が当てられた。
「……!?」
「あっははは!引っかかった引っかかった!」
私はたまらず笑った。相変わらずコナン君は騙されやすい。こと私や女──有希子さんには。
「か……母さん?瀬里奈も」
「私がいるのは分かってたでしょ?」
私がそう言うと、コナン君は渋い顔をしていたが、一応頷きはした。
「お母さんはあんたを心配して来てくれたのよ」
まぁ、少し悪ふざけが過ぎるけれど。
「哀ちゃんのことでしょ?」
私が訊くと、コナン君は「ああ」と頷いた。
そこから作戦会議が始まった。哀ちゃんは地下室に閉じ込めておき、上で哀ちゃんに変装したコナン君が待機。そして、哀ちゃんを保護しに来るであろうジョディさんにはコナン君が哀ちゃんのフリをして対応すること。
変装にはお母さんの手を借り、『季節外れのハロウィンパーティ』には新一に変装した服部平次君に出席してもらうことになった。
「でも平次君の口調はどうする気?あの子関西弁でしょ、確か」
「それなら問題ねーぜ」
「?」
まず、哀ちゃんに変装したコナン君はマスク型変声機をつけて彼女の声を出す。新一に変装した平次君が指につけたマイクで小声で推理を話し、それをコナン君が変声機を使って新一の声で話す。そしてその声を平次君のつけているネクタイ型のスピーカーから出す。
「へえ、考えたじゃない?」
博士とお母さんがイキイキとして準備をするのが目に浮かぶようだ。私は顔を綻ばせた。