第12章 黒の組織と真っ向勝負 満月の夜の二元ミステリー
──第三者side
その日、コナンは風邪をひいた灰原の看病をしに、阿笠博士の家に来ていた。コナンの手には、工藤邸に来ていた『季節外れのハロウィンパーティ』の招待状があった。
博士が電話を終えた後、灰原が「で?」と切り出した。
「あなたも乗る気?その幽霊船に……」
灰原がコホコホと咳をしながら、ベッドに腰掛けるコナンに訊く。訊かれた当のコナンも、招待状の裏にある差出人の名前を見ながら言った。
「ああ……差出人の名前が引っかかるからな……」
そう言ったコナンに、博士が驚いたように訊いた。
「心当たりがあるのか?」
「それがあるのは灰原の方じゃねーのか?」
コナンはちらりと灰原を見た。
「ヴァームースは、ウォッカやジンと同じ、酒の名前だからな……」
「さあ……聞いたことないわね……。私、お酒に詳しくないし……」
灰原は肩をすくめる。コナンは招待状を見つめながら話し続けた。
「イタリアで生まれた酒さ、ヴァームースは英語読み……日本じゃ、こう呼ばれているよ……」
コナンは初めて灰原をまっすぐ見た。
「vermouth(ベルモット)……」
その言葉を口にした瞬間、灰原の表情が変わった。恐怖と、──怯え。
「やっぱりな……その顔は聞き覚えのある名前……。黒ずくめの仲間のコードネームってわけか……」
灰原は顔を俯けた。博士も怯えたように言う。
「じゃ、じゃあその招待状は!?」
「ああ……奴らの仲間のベルモットさんからのお招き、ってわけさ……」
そしてニヤリと笑う。
「用意万端整えたか、痺れを切らしたかは分からねーが……こいつに乗らねー手はねぇよ……」
招待状を見て、またニヤリと笑う。だが灰原は怖い顔で「ダメよ……」と言った。
「行っちゃダメ!止めなさい!これは罠よ!行ったら殺さ……」
そこでゴホゴホ……と灰原が咳き込む。だがコナンは灰原を麻酔銃で眠らせた。このままじゃ、一歩も前に進めないから。