第11章 揺れる警視庁1200万人の人質
──第三者side
歩道橋から、双眼鏡で帝丹高校を見ている男がいた。男は腕時計を見ながら心の中でカウントを取る。
ジャスト3時。
ドォン!──とはいかなかった。
思い通りにいかなかった男は遠隔操作で何かをしようとする。だが電話をかけた携帯の音はかなり近くで聞こえた。ぎくりと男が身を竦める。振り向くと──たくさんの刑事達が男の後ろにいた。
帽子をかぶった恰幅のいい男性──目暮警部が携帯を持っている。
「残念だが、電話の相手はもう話せんそうだ……。爆発物処理班が密かに学校に入り、あんたが仕掛けていた盗聴器に気づかれんように音を立てず……ドラム缶に入った爆弾は5つともバラバラに解体してしまったからな……」
男は焦りと驚きを隠せない。目暮はそんな男の表情を読み取り、ニヤリと笑った。
「おや?その顔はどうしてその場所が分かったかって顔だな?あの暗号文から東都タワーと爆破予告時間を意味する文を除くとこうなる……。
『俺は剛球豪打のメジャーリーガー さあ延長戦の始まりだ 出来のいいストッパーを用意しても無駄だ 最後は俺が逆転する』
『メジャーリーガー』は英語に直せというキーワード。『出来のいいストッパー』は防御率のいい投手のこと。英語で『延長戦』はエクストラ イニングゲーム、『防御率』は略してERA。エクストラのEXTRAから『無駄』なERAを取るとXT!
XTを縦に書いて『最後に逆転』すると、『文』という漢字になる!学校を示す地図記号にな!
そして1つ目の爆弾の液晶パネルに表示されたヒントの『EVIT』これは探偵の英語表記、DETECTIVEの綴りを逆にして流れた文字の一部……。探偵を逆にすると偵探……。
帝丹という名の学校は小・中・高・大とあるが、この日曜日に生徒が大勢集まっているのは……全国模試をやっている帝丹高校しかないというわけだよ!」
絶対にバレないと思っていた爆弾のありかがバレたことで、男はかなり焦っていた。
「ちなみに、野球場に偽の爆弾を置かなかったのは、野球グラウンドを持つ高校から目を逸らしたかったから……まぁ油断してこんな目立つ場所から、双眼鏡で帝丹高校を見ていたあんたの負けだよ……」
目暮がじりじりと手すり側に男を追い詰める。男は咄嗟に歩道橋の下を通ったトラックの上に飛び降りた。
それを追うかのように──「さ、佐藤さん!?」