第11章 揺れる警視庁1200万人の人質
東都タワーの周りにヘリが飛び交う。
《東都タワー付近にいる住民は、警察官の指示に従って速やかに避難してください!》
「ええっ!?」
「逃げるのかよ?」
「コナン君と高木刑事がまだあの中にいるのに?」
光彦君、元太君、歩美ちゃんが車の中から佐藤刑事に文句を垂れた。
東都タワーのそばにいるのは危険なため、子供達だけでも避難させようということらしい。
「心配しないで、あの2人もこっちに向かってる所だから……」
佐藤刑事は笑ってそう言い、千葉刑事に子供達を安全な場所へ移動させるように指示した。
「瀬里奈ちゃんも乗って!」
「嫌です!」
「瀬里奈ちゃん!!」
佐藤刑事が咎める。
「せめてここにいさせてよ!死ぬなら一緒に死ぬ!」
「ダメよ!!いいから行きなさい!」
私は無理やり車に押し込められ、私と子供達を乗せた車は東都タワーから離れて行く。
「嫌だッ!嫌!」
私は抵抗する。だがもう遅い。
(新一……!!!)
ぎゅっと胸の前で指をお祈りの形で組む。その間にも、車はどんどんと東都タワーから離れて行く。
車のラジオからはタワーの内情が流れていた。
《依然2人は救出されないまま、時間は残り1分を切ろうとしています!たった今、機動隊にも退避命令が出た模様です!》
「そんな……!」
あの言葉を──聞いてしまったのか。あの、『悪魔の囁き』を……。
お願い……無事に帰って来て。
現場から外された私に出来ることは、ただ天に祈るのみだった。