第10章 シカゴから来た男──P&A
「それはこっちが聞きたいわよ。──シュウ、どういうこと?なぜここに彼女がいるの?」
「──前に話していた“例の人物”の1人だ」
赤井さんがそう言うと、ジョディさんとジェイムズさんの表情が一変した。やがてジョディさんが口を開いた。
「じゃあ彼女が……あの『ルシアン』なのね?」
「……!?何でそのコードネームを……?」
ジョディさんが自分のコードネームを知っていたことに、私は驚きを隠せなかった。
「FBIとしては組織の人物を調べることくらいはするわ」
「……やっぱり。じゃあここにいる3人はFBIなんだ」
私はじろっと3人を見回した。
「でも何で私をここに連れてきたんです?私、ただでさえ警察関係者と交流があるせいで、組織の中でも動きづらいのに」
そう言うと、赤井さんが私の前に出た。
「そのことなんだが……。組織の中で獲得した情報をFBIに流してはくれないか?」
「却下」
赤井さんに頼まれたが、私は即答した。3人が呆気に取られる中、私は言った。
「悪いけど、私はどこにも協力する気はない。まだあなた達を信用するに値するものもないし」
私がそう言うと、赤井さんがいきなり吹き出した。
「し、シュウ!?」
「赤井君!?どうしたんだね?」
FBIの2人がうろたえる。なるほど、この人が笑うのは珍しいらしい。
「……何かおかしい?」
「いや……強情な娘だと思ってな。さすがキティの娘だ」
キティ。そのコードネームを聞いて、私の体は強張った。