第2章 スコッチ
やがて警察が到着し、目暮警部が現場に来た。
「瀬里奈君!どうして君がここに?」
「目暮警部!人質になってたんですよ、そこの男の」
しれっとそう言うと、目暮警部はぎょっとしたように目を見開いた。「なんで君は事件に巻き込まれる……」という呟きは聞かなかったことにした。
事情聴取を終えた頃には日が沈む寸前だった。
「ごめんね蘭ちゃん、私の事情聴取にまで付き合わせちゃって」
実は蘭ちゃんの事情聴取は随分前に終わっていたのだけど、「瀬里奈お姉さんが終わるまで待ってます!」という蘭ちゃんの言葉で、彼女だけは私の事情聴取が終わるまで待っていたのだ。
「いえ、お父さんにはポアロで食べて来てって頼みましたから」
「あら、じゃあ私の家でご飯食べてく?今日はみんないるし」
そう提案すると、蘭ちゃんは慌ててかぶりを振った。
「いえ!せっかくの家族団らんなのにお邪魔しちゃう……」
「私は構わないわよ、それにうちの家族も蘭ちゃんなら大歓迎だろうし」
というか、新一はめちゃ喜ぶだろうなー分かりづらいけど。そう思ったが、そんな呟きは胸の内にそっとしまった。
家に電話してみると……「いいわよー、蘭ちゃんなら大歓迎♡」というお母さんの返事により、蘭ちゃんは工藤家に来ることとなった。
帰り道、2人できゃいきゃいと話していると、すれ違った人から嫌な気配がした。
殺気のような、敵意のような──とにかく、ピリピリとした嫌な気配。
「ッ!?」
勢いよく振り返る──がそれらしき人はおろか、影すらない。
「お姉さん?どうしたんですか?」
蘭ちゃんが怪訝そうに聞いて来る。私は笑顔を貼り付けて答えた。
「ううん、何でもない。知り合いがいた気がしたんだけど、気のせいだったみたいね」
そう言って蘭ちゃんとともに家路を急いだ。私の背中を食い入るように見つめている男が数名いることに気づかず──
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「そうか……さっきは気づかなかったが、彼女が……」
「ライ?何をしている?」
「行きますよ」
仲間2人に呼ばれ、ライと呼ばれた男はトレードマークの黒い長髪をなびかせて仲間の元へ向かった。
「ああ、すまない。すぐに行く、バーボン、スコッチ」
ライは仲間2人──バーボンとスコッチの元へ向かった。黒の気配をまとわせながら……。