第10章 シカゴから来た男──P&A
「P&Aか……」
私はうーんと唸った。
PとA、PとA……。PとAで『パ』になるけど、だったら『Paul』の『Pa』に血をつけるはずだし……。PとAで分けなきゃダメなのかしら。
ふと、私は気づいた。何でジェイムズさんは、わざわざPとAだけでなく&にも血をつけたのだろうか。PとAで考えてほしいなら、&にはつけないはず……そこまで考えて、私はハッと閃いた。
そっか、そうすれば……。でもどっちだろう……?いや、待て。彼は歳をとったロンドン生まれの外国人。一昔前の時代のイギリス人が見てそう思う車は……アレしかない!
「何だ?瀬里奈この暗号の意味、分かったのか?」
「ええ、あの人は──」
そこまで言った時、携帯の着信音が鳴り響いた。みんなが自分の携帯を見るが、やがて私のだと分かり、私は慌てて電話に出た。
「も、もしもし?」
『あ、瀬里奈さん?ごめんなさい、今から出られますか?』
電話をして来たのは梓さんだった。
「い、今から?」
『今日来てくれるはずの人が風邪引いちゃって……この時間から来られるの、瀬里奈さんしかいないんですよ!』
そう頼まれては行くしかない。私は腹を括った。
「分かりました。ただ、今ちょっと遠出してるんで、そっちに着くの遅くなるかも……」
『全然!とりあえず1時間後に来れるようにお願いします!』
「了解しました」
電話を切り、私はコナンを見て両手を合わせた。
「ごめん、バイトが入った」
「それは構わねーけど……せめて暗号のヒントくらいくれよ」
「ヒント?んー……Pと&とA、かな?あとロンドン!」
「はぁ?」
「それじゃっ!」
私はそれだけ言うと、怪訝な顔をしているコナン君を放置して車を停めた駐車場にバタバタと走った。
バイト休憩に入った時に携帯を見ると、コナン君からメールが入っていた。ジェイムズさんは見つかったらしい。だが事情聴取の前に姿をくらませたとか。
「……嫌な感じ」
私はボソッと呟いた。