第10章 シカゴから来た男──P&A
そして彼は自己紹介をした。彼の名前はジェイムズ・ブラックというらしい。
歩美から探偵バッジを見せてもらい、ジェイムズさんは『ベイカーストリートイレギュラーズ』だ、と喜んでいた。
そして彼は「せっかく仲良くなったイレギュラーズのみんなにランチをご馳走しよう」と話し、ジェイムズさんがレンタルしたワゴンで行こうということになった。
「でも私の運転、ランチと違ってうまくない!運転はあなたね!」
ジェイムズさんはそう言いながら博士を指差した。彼曰く、「右ハンドル難しいです!」だそうだ。それを聞いたコナン君が「へぇ〜……」と言った。
「右ハンドルに慣れてないってことは……今はイギリスに住んでないんだね?」
「Oh yes!生まれはホームズのロンドン……育ちはシカゴ……」
ジェイムズさんは哀しそうに笑った。
「The Windy City where Capone stormed……」
カポネがいた街……。私は彼の言動に不思議な何かを感じた。それは哀ちゃんも同じだったようで、彼を怖い顔でじぃっと見ていた。
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「おっそいなぁ〜……」
私は腕時計を見て呟いた。
「様子見に行ってみようか?ここから歩いて行ける駐車場なんてたかが知れてるし」
そう言って、コナン君と哀ちゃん、少年探偵団と私の6人で駐車場をしらみ潰しに捜査した。
「あ……きっとこれですよ、ジェイムズさんのワゴン!」
光彦君が見つけたのは、運転席の前にレオンのぬいぐるみが置いてあるワゴンだった。
だがドアは開けっ放しで、鍵も刺さったまま。そこへ──
「髭の外国人なら、コート着たオッサン2人と行っちゃったぞ!」
子供たちが3人、そう言った。彼らは細い路地を指差し、「あっちに行っていた」と教えてくれた。慌ててコナン君と私がそちらへ向かう。と、歩道の所にレオンのストラップが落ちていた。
子供たちは口々に「友達と待ち合わせしていたとか言っていたから、自分達のことを忘れているんじゃないか」などと話すが
「待って……このストラップ、おかしいわよ」
私が言うと、コナンも頷いた。
「見ろよこのストラップ……Pと&とAが綺麗に血で塗り潰されてるだろ?きっと後で自分を探しに来るオレ達に、何かを伝えようとしたのかもしれねーよな?」