第10章 シカゴから来た男──P&A
「Can you give me a break!?」
カン ユー ギブ ミー ア ブレイク、もういい加減にしてくれないか!?彼はそう叫んだ。
え……?と私が不思議に思うと、コナン君が不敵に笑った。彼は「女王陛下仕込みのカウボーイを助け出してやろう」と言い、少年探偵団と共に髭の外国人をマスコミから引っ張り出した。
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「サンキューベリィマッチ!ボウヤ達のおかげで助かりました!」
何でも彼はホークさんに似てる、とよく言われるそうだが、こんなに間違えられたのは初めてだという。
「でも何でわざわざ日本に?」
私が訊くと、彼はレオンのストラップを見せて言った。
「どーしてもコレが欲しくてね♡だから日本に来たんです!」
彼は『In Japan』と書かれているそのストラップが欲しかったらしく、わざわざ日本まで来たのだとか。
だが先ほどのマスコミの件で、待ち合わせをしていた友人と会えなくなってしまったらしい。
「ロングヘアーの男、見かけませんでしたか?」
「ろ……ロングヘアー?」
私はどきりとした。今は短く切っていたが、昔の彼もロングヘアーだったから。
だがその質問には阿笠博士が答えてくれた。超満員だったから分からない、と。
内心ホッとしつつ、私はコナン君を振り向いた。
「でもよく分かったわね、この人がホークさんじゃないって……」
「言葉だよ……」
「言葉?」
私はきょとんとした。確かに発音は気になったが、それが何なんだろうか?
「オジサン、『Can(キャン)』のことを『Can(カン)』って発音してたでしょ?あれはクイーンズイングリッシュ!家が代々カウボーイで生粋の南部の男が、英国訛りで話すのはちょっと不自然だなーって思ったんだよ!」
「あ、そっか!確かに……。TVで見るホークさんは、南部訛りの強い豪快な人だったものね……」
私はぽんっと拳を手の平に打ち付けた。
「それにパンフレットの顔とよーく見比べたら違う顔だったしね……」
コナンがそう言うと、彼は嬉しそうに「How perceptive of you !」と言った。
「何て言ってるの?」
歩美ちゃんに訊かれ、私は答えた。「素晴らしい推理力だ!ってさ」