第9章 バトルゲーム 〜謎めいた乗客〜
まだ確証はないが──可能性はかなり高い。
と、犯人達は新出先生と赤井さんを前に呼んだ。その間にコナン君が何やらごそごそとやり始める。
何をする気?私は眉をひそめたが、コナン君にはコナン君なりの考えがあるのだろうと思い、私は口出しはしなかった。
やがてバスは小仏トンネルに入る。
「ホラ、お前ら!このスキーウェアに着替えて床に座れ!」
「このゴーグルと帽子も忘れるなよ!」
犯人達は新出先生と赤井さんに自分たちの着ていたスキーウェアを手渡した。解放された乗客のフリをして、バスから降りて逃げる彼らの時間を稼ぐためらしい。
「オレ達がバスから降りたら、そのままバスを走らせて警察の目をバスに向けろ!」
犯人達は運転手に銃を向けた。
「もちろんちゃんと指示に従ってもらうために……人質を1人取らせてもらう……」
犯人の1人がバスの通路を歩いた。そして後ろの座席にいる、ガムを噛んでいた女を指名する。
「……」
彼女の腕時計が1:00で止まっているのが少し気になるが──
「いいか!?トンネルを出たらスピードを上げて、後ろの警察の車を引き離してからバスを止めるんだ!オレ達が降りたらガスが尽きるまで突っ走れ!この女の顔を吹っ飛ばしたくなかったらなァ!」
運転手をそう言って脅し、言うことを聞かせる。
やはり──彼女は奴らの仲間か。
新出先生と赤井さんに自分たちのスキーウェアを着させたのは、彼らが犯人だと警察に錯覚させるため。
だがそのためには乗客全員の口を塞ぐ必要がある。3人が降りた後で爆弾を爆発させ、犯人は乗客達と共に爆死したと思わせ、自分達は解放された人質のフリをして、自分達とは全く違う犯人像を口を揃えて言うつもりだろう。
下手に動いて犯人達を刺激すれば、爆弾を爆発させられるだろう。この手の犯人は、刺激すると何をするか分からない。
ここは爆発する前に逃げ出すか?いや、運転手がバスを止めない限りは不可能だ。
ここはひとつ、我らが弟に任せてみるか。何やら策があるようだし。私はコナン君と少年探偵団をチラリと見て笑った。