第9章 バトルゲーム 〜謎めいた乗客〜
バスジャックした2人組に携帯を奪われる。犯人は運転手の携帯でバス会社に電話をしていた。
彼らの要求は、服役中の矢島邦夫の釈放。
どうやら2人は強盗グループの一員で、宝石に詳しくない残った仲間が奪った宝石を抱えて未だにさばけずにボスの奪還を試みたか、牢から出すことでボスしか知らない宝石の隠し場所を訊き出そうという所だろう。
ふと、後ろをちらりと見た。……げ。
先ほどの見覚えのある男──FBI捜査官・赤井秀一さんだ。
しくじった。
ここに来てFBIがいるなんて……。それに、このバスにはベルモットも乗っている。
私は内心大きく舌打ちをした。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「フフフ……そうか、釈放する気になったか……」
犯人達の要求は通ったらしい。犯人の1人がスキー袋を縦に置いた。
コナン君が犯人達の目を盗んでその中身を確認しようとするが──
「早く殺して欲しいんなら、望み通りにしてやるぜぇ?」
犯人の1人に気づかれ、拳銃を向けられた。
「コナン君!」
私はコナン君を庇おうと前に出ようとした。だがそれより先に──
「止めてください!!ただの子供のイタズラじゃないですか!?」
新出先生がコナン君を庇った。
「それにあなた方の要求は通ったはず!ここで乗客を1人でも殺すと、計画通りにいかないんじゃないですか?」
コナン君に銃を向けていた男が引き金を引こうとしたが、もう1人に止められる。「アレに当たったらどーすんだ?」などと話しながら。
アレに当たったら……ってことは、これの中身は爆弾か。
犯人達からは見えない位置だったはずのコナン君の行動が筒抜けということは──もう1人、犯人達の仲間がいるということだ。
そして、それはコナン君の行動を見ることができた後ろの3人のうちの誰かだということ。
赤井さんは……ないな。咳だけで何かを伝えることは不可能に近い。
その隣にいる、黒ずくめの老人は……耳に補聴器を付けている。補聴器が実はマイクだったとかならいけそうだが──何かを喋ったりしていれば両隣の2人が不審がるはず。
消去法で、向かって左端の風船ガムを噛んでいる女か。まず、ガムを膨らませることで怪しい乗客がいることを伝える。そして破裂したガムを取る手を左、右と変え、またその指の数も変えることで怪しい乗客はどちらの列のどこにいるのかを犯人達に教えていたのだろう。