第8章 命懸けの復活
今日は昼過ぎまでポアロのバイトをこなし、その後から講義が2時間。
「瀬里さ、最近忙しそーだよね」
1つ目の講義が終わり、華南と話している時だった。華南はニヤニヤとしながらそう言った。
「そう?まぁバイト始めたしね」
「それに最近、化粧品とか揃え始めちゃってさ。ね、カレシでも出来た?」
「なっ!?」
予想していたよりも斜め上から質問された。私は顔を真っ赤にさせ、わたわたとし始めた。
「ち、違うよ!私だって化粧くらいするし……バイトは親のお金タダ遣いするのはアレだなって思ったからで……」
「バイト先にイケメンでもいるわけ?」
「いないいない。可愛い店員さんならいるけどね」
「可愛い店員さん!?」
その言葉に反応したのは私達の前に座っていた樹である。勢いよく振り向いたせいで、樹の髪が真白君に思い切り当たった。
「樹……髪、邪魔」
「ん?おお、悪い真白。で、工藤!可愛い店員さんいんのか!?」
樹は食い気味に私ににじり寄った。
「う、うん……。結構可愛いと思うよ……?」
「名前は!」
「え、榎本梓さん……」
私が呆気にとられながら言うと、樹はガッツポーズをした。
「よし、帰りに直行だ!待っててねオレのプリンセス梓ちゅわん!!」
………。暴走し始めた樹に、真白君と華南、私は大きくため息をついたのだった。
「ね、ねぇ……樹、こんなだったっけ?」
隣にいる華南に訊いてみる。華南はあっさり言った。
「いつもでしょ」
その言葉に真白君も頷く。
「美人の瀬里奈が『可愛い』っていうことはかなりだし……」
真白君がボソボソと言った。その言葉に私は首を傾げる。
「美人?誰が?」
「……だから、瀬里奈が」
聞き間違いではなかったか、と思い、私は大真面目に言った。
「……真白君、目ぇ大丈夫?眼科行く?」
かなり真面目に言ったつもりなのに、真白君はしかめ面をした。華南は樹と私を見比べ、大きくため息をついた。
「……これだから自覚ない美人は……」
「いつか襲われても文句は言えないね」
……だから何なのか。私は盛大に膨れっ面になった。