第8章 命懸けの復活
次の日。
工藤邸は朝から玄関のチャイムが鳴り響いていた。相手は分かっている。
「ったくあいつは……悪ぃ瀬里奈、ちょっとあいつに文句言ってくる」
「ハイハイ」
私は目玉焼きを皿に乗せながら返事をした。
玄関の方で「一回鳴らしゃ分かるってーの!」と言う新一の怒声が聞こえる。朝食の準備を終えた私はくすくすと笑いながら玄関へ向かった。
「ごめんね蘭ちゃん。新一、さっき起きたところだから……機嫌悪いのよ」
そう言うと、蘭ちゃんはニコッと笑って「平気ですよ!」と答えた。
「あら、コナン君は?」
「え?あれ、いない……」
「ちょっと待ってて、探して来てあげるから」
私はそう言うとドアを閉めて家の中に入った。洗面台の方から話し声が聞こえる。
「みーつけた。哀ちゃん、蘭ちゃんが心配してたよ?」
私がひょこっと顔を出すと、哀ちゃんと新一は話し中だったようで、2人共こちらを見た。
「あ、ごめん……話し中だった?」
「平気よ。……とにかく、事が落ち着くまでこの格好であの探偵事務所に居候してあげるから、目立つ行動は避けて……」
「なぁ灰原……」
哀ちゃんがそう言うと、新一は不思議そうに訊いた。
「何でお前そこまでしてくれるんだ?」
解毒剤が出来たんなら、お前だってすぐにでも元の体に戻りたいんじゃねーのか?と。私はくすくすと笑った。
全く、この弟は鈍感なんだから。
哀ちゃんは『新一の正体がバレたら自分にも火の粉が飛んでくるかもしれないから協力しているだけ。それに新一が飲んだのはまだ試作品だから、自分が使うかどうかは新一の体調を観察してから決める』とその場を凌いだ。まぁ半分は本当のことなんだろうけど。
「ほら、早く行かないと遅刻するわよ?蘭ちゃんも待ちくたびれちゃうって」
私がそう声をかけると、2人は揃って洗面所から出た。