第8章 命懸けの復活
帰り道。
4人で私の働いている喫茶店『ポアロ』に来ていた。
「あれ、瀬里奈さん?どうしたの?」
「すみません。友達が行ってみたいって聞かなくて……」
私が説明するよりも早く、樹が梓さんの前に跪いた。
「初めましてボクのプリンセス。ボクは斉藤樹、あなたのナイトです」
「は、はぁ……」
「よろしければ、ボクとデートでも──痛ぇっ!」
樹が言い終わるよりも早く、華南と私で樹にゲンコツを落としていた。
「本当バカよね!ったく!」
「梓さん困ってるでしょ!?」
私は樹の首根っこを引っ掴んで外に放り出した。
「もう帰るわよ!……梓さん、すみませんでした」
私は深々と頭を下げた。だが梓さんは、「いいのいいの、気にしないで」と言ってくれた。優しい!ほんっと優しい!
「ほら帰った帰った!私も帰るから!」
私がそう言いながら手を「しっしっ」と払うと、樹は懲りずに梓に手を振った。
「梓ちゅわんまた来るね〜♡」
「……真白、こいつどっかに縛り付けといて」
「了解」
華南と真白君の間で何か怖い会話が繰り広げられる。
「じゃあまた明日ね」
「バイバイ瀬里〜」
私は3人とは家が別方向なので、ポアロで解散した。樹が「梓ちゅわん〜……」と騒いでいるのを遠くに聞きながら家路に着いた。
だが家に帰ると──
「……は?何、あんた出掛けるの?」
新一が珍しくよそ行きの服に着替えていたのを見て、思わずそう言ってしまった。新一は「おう」と頷く。
「蘭とメシ食いに行くんだよ」
「えー、どこ?」
「米花センタービルの展望レストラン」
私は言葉を失った。何、今時の高校生ってそんな洒落た所行くわけ!?
「えーいいなぁ……」
「瀬里奈もカレシと行きゃーいいのによ」
「私にカレシいると本気で思ってんの?」
私はジト目で睨んだ。新一が軽く笑うだけに留める。
「まぁ……正体がバレなければいいけどね」
「大丈夫だって!」
「あと、お父さんのカードで破産しないようにね」
苦笑いしながら私が言うと、新一は「そこまで食わねーよ」と笑った。
だがその日の内に、新一はまたコナンに戻ってしまった──というのは、その場に駆けつけた灰原から聞いたことである。