第19章 和訳せよ “Lover is a worrywart”
「こうして、向かい合っていてもなんだかまだ信じられないな。」
柊が口を開く。
「何がですか?」
「 結城くんと再会できたのもそうだけど、僕は小学生の頃の君しか知らないからね。こんなに綺麗なお嬢さんになって、なんだか緊張するなぁ。」
柊照れたように人差し指で頬を掻く。
その様子に俺は下唇を噛んだ。何が綺麗なお嬢さんだ。
「...先生は変わってませんね。」
「そうかな?」
くのえさんたちのテーブルに料理が運ばれてくる。
2人は料理の話やお互いの近況、いろいろなことについて話しながら食事を始めた。
「....え、じゃぁ以前一緒にいた男性は恋人なのかい?」
話題は くのえさんの恋人について。つまりは俺の話。
「はい。」
「...それにしては少し歳が離れてる印象だったけど。もしかして、何かトラブルに巻き込まれているとか、その、弱味を握られてとか、金銭的なものが発生してるとか...。なにか困っていることがあれば」
な...。眉間に皺が寄っていくのがわかる。
そんなことないと今すぐにでも振り返って言ってやりたい。
「ないですよ。」
くのえさんが 柊の言葉を遮るように答えた。
「え?」
「あ..透さんとのことで困ってることなんて1つもないですよ?歳は少し離れてるかもしれませんけど、真剣に付き合ってるんです。だから、大丈夫です。」
そう言って くのえさんは笑った気がした。
俺は思わずにやけそうになった口元を手で抑えた。
くのえさんが俺のことを下の名前で呼んだ?
一度安室と言いかけて言い直したところがなんだか微笑ましかった。
今度のデートの時にでも下の名前で呼んで欲しいと催促してみよう。