第14章 *膝枕*
何かが落ちる音がした。
音の方向へ顔を向ける。
「.....何してるんですか?安室さん。」
「....え"っ___。お義兄さ、ん?」
音の先には くのえさんのお義兄さんが立っていた。
持っていた用具を落としたらしい。
「...ずいぶん、寝心地が良さそうですね。大体、俺は安室さんより年下だし、安室さんにお義兄さんと呼ばれる筋合いはないですけど。」
トゲトゲとした言葉が刺さる。
すぐさま膝の上から飛び起きた。
「理由によっては、削りますけど?」
お義兄さんの手には彫刻刀が握られていた。
「え、えっと....」
「 翠君。安室さんを脅かさないでよ。」
「だって、 くーちゃんもひどいよー。俺だって膝枕してもらったことないのに。」
「...また今度ね。さ、今日は彫刻作るんでしょ?後でココア入れて持ってくから。早く作業室行った行った。」
そう言って くのえさんはお義兄さんの背中を押し行ってしまう。
び、びっくりしたぁ。
今日イチで心臓飛び出るかと思った。
「安室さん、大丈夫ですか?」
「お、おかえりなさい。」
「安室さん、顔が面白いですけど、本当に大丈夫ですか?あはは。」
「だ、大丈夫だよ。......僕らが恋人同士だってお義兄さん知ってるのか?」
「...さぁ?伝えてないので知らないんじゃないですかね?」
「そ、そうですか。」
お義兄さんになんて思われたのか。
付き合ってるって思われているならまだいいが、もし良からぬ疑いでもかけられていたら....。
「よし、わかった。今度お義兄さんに挨拶に来よう。」
きっと今日行っても話がこじれるだけな気がするし。
「本当ですか?...なんかドキドキしますね。ふふふ。」
くのえさんはニコニコと微笑んでいた。
人の気も知らずに...。
俺の方がドキドキして胸が張り裂けそうだよ。
俺的には......。
「安室さん。 翠君、集中しちゃうとなかなか出て来ないので。大丈夫ですよ?」
その言葉を聞き、また くのえさんの膝枕にお邪魔する。
「...安室さん、本当に正直ですね。」
「... くのえさんが言ったんだろ?」
また くのえさんは僕の髪を撫でている。
*膝枕*end♡