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境界線。【安室透夢小説】

第10章 問.月が綺麗ですね。


結局、 くのえさんの家に着いてしまった。


「今日、さすがにまだお腹空きませんよね?」

くのえさんが問いかける。

「そうですね。動物園であんなに色々と食べてしまいましたし。そうだ、夜お腹が空いたら、今日は僕が何か作りますよ。」

「本当ですか?楽しみだなぁ。.....じゃぁ、ソファにでも座っててください。お風呂が沸くまで例のお話でもしましょうか?今、コーヒーを持っていくので。」

くのえさんに促されるままソファに腰を下ろす。
.....好きな人の家に3日連続でお泊まり。
手を出さなかった自分を全力で褒めてやりたいよ。



「安室さん、コーヒーはブラックでよかったですよね?」

「ありがとうございます。」

くのえさんはテーブルの上にコーヒーカップを二つ置くと....

「ちょ、どこに座ってるんですか!」

くのえさんは僕の足と足の間に腰を下ろす。

「.....なんとなく、顔を見られたくないんです。だから、このまま。」

そう言って くのえさんは僕にもたれかかるように背中を預ける。
ふわりと女の子の香りがした。


「.....と言ってもそう大した話ではないんですけどね。車の中で話していたスティグマの話は多分。安室さんの想像通りだと思います。」

「.....そう、ですか。」

「警察関係者とか、親戚、私のこと小さい頃から知ってる友人は私のこと、殺人犯に両親を殺された可哀想な被害者って烙印を押してると思いますよ。事件直後はそんな同情だとか憐れみの目で見られるのにずっとイライラしてました。でも、私そういうの隠すの上手だから、周りの人が気づいてたのかどうかは知りませんけど。」

「.....でも、事件の被害者っていうのは事実。10年前のまだ幼い時にあんな事件に巻き込まれるなんて....」
....」



「かわいそう。ですか?.....別にそんなことないですよ?あの人達が殺されたところで私にはなんの弊害もありませんでしたし。ほら、車の中でも話したでしょう?家族仲良くなかったですし。....実際、父親は血の繋がっていない赤の他人。母親には、あんたなんか産まなきゃよかったって、何度言われたか。」


他人事のように淡々と話していく。
くのえさんがどんな顔をしているのかわからない。






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