第9章 ××はいつも1つ。
安室side
警察は、如月知佳についての聞き込みをしていくうちに、近隣住民や両親の様子などから虐待を疑っていたらしい。
この後、知佳くんは警察で一時保護、 くのえさんは今日のところは帰るよう言われ、今、助手席に座り外を眺めていた。
くのえさんは知佳くんの明日も来ると約束をしていた。
先ほどのキスのこともあり変に意識してしまう。
「...誘拐犯にならずにすみましたね。」
「.....そうですね。」
ブーッブーッブーッ
「安室さん、スマホ、なってますよ。」
「今、運転中ですから。」
「.....もぅ。急用だったらどうするんですか?路肩に停めて、出たらどうですか?まだそんなに遅くないしそれくらいの時間はありますから。」
「.....すみません。」
車を路肩に寄せ、ハザードをたく。
「はい。安室です。」
『降谷さんですか?昨日話していた女性と目暮さんの件なんですが… 結城 くのえは10年前に起こった殺人監禁事件の被害者。目暮さんはその事件の担当刑事だったようです。詳しくは資料を送るので…。』
電話は風見から。
その報告内容に耳を疑った。
「...............あぁ、すまない。また連絡する。」
くのえさんが?
一体、何がどうなっているんだ。
「安室さん?電話大丈夫でした?急ぎの用でしたら、私歩いて帰りますけど…?」
くのえさんが俺の顔を覗き込む。
くのえさんが事件の被害者。
「.....電話。私のことですか?.....安室さん、本当は探偵じゃなくて警察の人かなにかだったりして。」
「まさか。.......... くのえさん。僕の知りたいこと全てに回答してくれるというのは、今もまだ有効ですか?」
「どうしよっかなぁ。.....ふふっ。いいですよ。今日日付が変わるまでが有効期限にしましょう。」
くのえさんは悪戯っぽく笑ってみせた。
「......答えたくなかったら、答えなくて結構ですから。先ほど くのえさんの言っていた、社会的スティグマと10年前、あなたに起こった事件の関係について。」
第10章につづく