第8章 青春より黒春ってか?【太宰治】
この人、こんなことするか・・・?
私の為に、太宰、さんが・・・?
「おいしい?」
太宰さんが美しい笑顔で私に尋ねる。
「ひゃい・・・」
駄目だ。信じられない。あの太宰さんが私に?フェミニストとは聞いていた。とんだ女たらしだ、とも聞いていた。
しかし、この人は一回も私に、普段女の人に見せるような表情や行動をしない。優しくない、というわけではないが、女として見られていないのか、あの表情や行動それらは一切私に向けなかった。
しかし今、この状況は・・
「(やさしくされて、いる)」
他の女性との扱いとはまた違うな、と思うけど
それでも矢張り、優しい。あの、太宰さんが。
「なんだか・・きもちわるい・・」
「ええ!?気持ち悪い!?どこが!!??ナースコール!?ナースコールかいいい!!!???」
「違う・・けど」
「えっ・・・なんだ違うのかい。折角、私の美声が聴ける機会(チャンス)だったのに」
「いや、普通にナースボタン押してください・・」
太宰さんはきょとんとしている。
私の返答待ちみたいだ。
「いや・・太宰さんが優しい、から」
「優しい?何を云ってるんだい。私は何時でも優しい」
うんうん、とひとりうなずく太宰さん。
「そうじゃなくて、あの、太宰さんって私に、ほかの女の人に向ける態度で接しないじゃないですか」
「・・・・それは、私にあのような態度でいろ、と?」
太宰さんの目が細められる。空気が急に冷えた気がした。
「否・・そうではなくて」
「不思議だったんですよ。私にだけ、普通?の態度で」
「・・・」
「だから、今日は、なんか、いつもと違ってて・・。むず痒いなあ・・なんて」
おかしいですよね、へへ、と笑いかける。しかし、私の笑顔とは対照的に太宰さんは真剣な表情をしていた。
「はあ、きみは相当な大馬鹿だねえ」
「はっ!?」
何故か急に罵倒された。バカとは聞き捨てならない。
「お言葉ですが私の成績は・・」
「そうじゃないよ鈍いってこと」
「鈍い?」
「じゃあにぶにぶの君にもわかるように、行動で示そうじゃあないか」