第2章 I know you
『空神様』との距離が少しだけ縮まった翌日、また新たな人物が私達の元を訪れた。
真っ白な欧米風の装束を身に纏ったその人は、丁寧な言葉遣いで『安倍晴明』だと名乗る。
「私は貴方方、漂流者(ドリフターズ)を支える者。
そして、廃棄物(エンズ)を憎む者。
この世界に居てはいけない廃棄物(エンズ)、
彼等を滅ぼす使命を受けた者。
どうか我等に力を貸して頂きたい。」
安倍晴明は滑らかにそう語ったけれど、私には何を言っているのか全く理解出来なかった。
私と『空神様』が漂流者(ドリフターズ)?
廃棄物(エンズ)って……それを滅ぼすって一体……?
当然『空神様』も理解不能な様だ。
「ああんッ!?
何言ってんだ、テメー!
訳分かんねー事言ってるとブッ飛ばすぞ、コノヤロウ!」
だけど『空神様』の威圧的な物言いにも安倍晴明は全く動じなかった。
まるで『空神様』がこういう人だと最初から知っていたみたいに。
「詳しい話は後程致しますが……
兎に角、何は無くとも廃棄物(エンズ)を滅ぼさねば。」
「その廃棄物(エンズ)とやらを滅ぼさねーと
どーなるッつーんだよ?」
「この世界が滅びます。
全てが紅蓮の炎に包まれて……。」
その言葉に『空神様』がぴくりと敏感に反応する。
「紅蓮の炎に包まれて……ってか。
そりゃ見過ごせねーなァ。」
紅蓮の炎という言い回しに、私はこの世界に飛ばされる直前の光景を思い出し身体がぶるりと震えた。
「貴方の力が必要なのです。
此処から南に10㎞程先の岩礁に
貴方を待っている方が居られます。
その御方からの手紙を預かって参りました。」
安倍晴明が取り出した手紙を受け取った『空神様』の顔色が一瞬で変わり、そして少しの間の後大声で笑い出す。