第1章 Praying Night
その日、『空神様』は突然現れた。
耳を劈く轟音に空を見上げると、戦闘機が驚く程の低空飛行で突っ込んで来る。
「…………零戦?」
その機体は私達の頭を掠める様に降りて行き、木々を薙ぎ倒しながら着陸した。
「ああっ……止まってんじゃねーぞ、コノヤロウ!」
そして大声で悪態を付きながら零戦から飛び出して来た人の姿に私は息を飲む。
「日本の軍人さん………」
私は………昭和20年3月10日の東京から、この世界へやって来た。
その日の東京では町中が炎に包まれ、まるで塵屑の様に人々は燃えて行った。
父や母とも逸れ、逃げ場を無くした私はひたすらに水を求めて川に飛び込んだけれど……
そこも地獄だった。
累々と死人が浮かび、その死人に着いた炎が川面を走る。
もう無理だ。
もう逃げ切れない。
そう覚悟した私は……気が付いたらこの場所に居た。