第6章 第六章
小さく言った蛍丸くんの声を聞き、私は愛おしく微笑んだ。昔ながらの街並みを歩いて行く、江戸時代にタイムスリップしたような古い木材型の家が建ち並ぶ。興奮したように短刀達は走って行き、保護者である一期さんや明石さんを連れてこれば良かったかなと考えて見つめていた。しかし流石は薬研くん、オロオロするだけの私と違ってしっかり周りを見て指示をする彼にありがたくなった。
「綺麗な街並みだねー…」
「主はどうしてここに来たかったの?」
「んっ?お仕事を頑張ってくれたお礼と皆ともっと仲良くなりたかったからかな?」
「それもあるとは思うけど、本当は違うよね…?」
「蛍丸くんって鋭いね…」
手を繋いでいた蛍丸くんが私を見つめて聞いて来る。洞察力に素晴らしいとよしよし頭を撫でていると、嬉しそうに目を細めて「なでなでするの、楽しい?」と聞いて来た。勿論と頷く私に素直に撫でられ続けている蛍丸くんは可愛らしい。
「万屋にお守りが売ってるって調べてね?」
「お守り?そんなの必要?」
「うん、皆私の大切な刀だもの…一振りずつ全員に渡しておくつもりなんだよね?」
元の世界でお金を全て崩して、こちらの世界で全て甲州金に変えた為今の私は大金持ちである。数千万くらい汗水垂らして稼いだお金を銀行に貯金してあったからだ、まぁ審神者になってからまたお金が入るから、貧乏になった訳ではない。けれど私が全てのお金を崩したと言えば刀剣男士達は心配するか引かれるかするので言わないでおこうと思う。
「皆、死んで欲しくないから…」
「俺、主の事守りたい…」
「蛍丸くん…」
「だからお守り頂戴?」
いいよ?沢山私を助けて…でも無理して怪我しないでね?と笑い合うと指切りし約束する。万屋を目指し歩いて行く、通り過ぎる違う審神者であろう人達はチラリと私の姿を見てコソコソと陰口を言っていた。私がいる場所は廃人の住まう本丸らしい、そんな本丸をド素人の私が継ぐなど本当に稀なようで…相応しくないと耳に届き聞こえて来る。そう言われても、政府が決めた事なので断る訳には行かなかったのだ。
「主…大丈夫?」
「えっ、あぁ…うん」
妙なゴタゴタに巻き込まれまいと笑顔で大丈夫だと言い歩いて行く。すると私の手を離した蛍丸くんが名も知らない審神者に向かって刀を抜いた。さっきまでのにこにことした笑顔はなく、鋭い眼光で相手の審神者を強く睨んで呟く。