第6章 第六章
ズキューン!とハートを鷲掴みにされたように思えた。あんな(どうでも良いとは失礼だが)不毛な争いよりも私の視線には薬研くんしか映らない…というよりそんな台詞を一度でもいいから言われて見たかったと心から思う。
「薬研くん…抱いて!」
「ははっ!俺っちは大将を抱くのは構わねぇが…もっと自分を大事にしろよ?」
私の唇に人差し指を押し当てた薬研くんはにこりと目を細めている、そんな事を言われたら益々惚れずにはいられない。キャー!と内心黄色い声を上げて、私自身が桜乱舞が起こっている、横から薬研くんに抱き付ければ、しっかり支えてくれて背中に両腕が回る。その後ろで乱ちゃんが抱き着いて来た。
「あるじさん、ボクも!」
「いいよ、乱ちゃんは私が抱いてあげる!」
「キャー!あるじさん男前!大好きっ!」
朝からなんという会話をしているのだろうかと、可笑しくてついつい笑ってしまいそうになった。それにしても大人の刀剣男士が羨ましそうに私の事を見ており、その熱い視線には気付いているも、絶対にしないと頑なに誓った。
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朝食を召し上がり大皿を片付けて行く。粟田口の短刀達が私の周りできゃっきゃっと可愛らしく走り回っておりピンク色の髪が私を見上げている為、私は秋田くんの身長まで屈むとどうしたのか聞き微笑んだ。
「主君、僕もお手伝いさせて下さい!」
「あら本当?とても助かるわ…それじゃあ一緒に台所まで運んでくれる?」
「はい、頑張ります!」
元気な笑みと共に頷いた秋田くんは私の後ろでとことこと歩いて来る。愛苦しくて抱き締めたい衝動に駆られてしまうがなんとか思い止まった。一緒に空いた皿を持ち台所まで進んで行く、私の前を歩いていた前田くんが私の名を呼んだ。
「主君、何か手伝う事はありませんか?」
「ありがとう、前田くんも手伝ってくれるの?」
「僕だけではなく、粟田口全ての短刀が君主の身をお護りしつつお手伝いを行わせて頂きます」
「ふふっ…用心棒って所かな?皆とても強いから、護ってくれるとありがたいよ…」
くすりと微笑む私に厚くんはニッと笑顔を見せて、私が持っていた大皿を奪うように持って行かれた。自信げな笑みと同時に口を開く。
「おっと大将、これは男のオレに任せろよな!」
「えっ、でも…」
「女が重いモノを持つのはなしだぜ?」
「そ、そうです!主様はゆっくり寛いで下さいっ!」
「……」