第1章 第一章
「えぇー…初めまして、前の主から引き継ぐ形で入らせて頂きました。審神者です…性別は女で、年は二十代になります、宜しくお願い致します…」
合コンのような挨拶と共に土下座で頭を下げた私。空気が重い、視線が痛い、私の場違い感が凄い。眩しい程のイケメン達に違う意味でドキドキと心臓が跳ねた、私はこの本丸に来て早々首をはねられるのではないだろうか。涙目で畳が見えなくなって来た。神経が磨り減って行くのが分かる、気持ち悪い。
「…なあ、主はどこに行ったんだ?」
少しばかり驚いた声で私に問いた男性は頭を上げろと私の肩をぽんぽんと優しく叩く。私は恐る恐る顔を上げるととても真っ白で美しい男性が私の傍に寄り、首を傾げていた。なんて綺麗な人なのだろうか…見惚れそうになる私は綺麗過ぎる目の前の男性に、妙な恐怖を感じ震える唇でなんとか伝える。
「その…彼女は結婚?えぇと…婚儀を上げるので、ここの本丸は見られないからと。私に譲り受ける形になりまして」
「ふむ…あの主がか。してそなたがここを受け継ぐ新しき主という訳だな」
三日月の瞳が私を写す、優雅に口元を隠し青い衣を身にまとう、これはまた美しい人は微笑んでいた。けれど目が全く笑っていない。ゾクリと粟立つ私はなんとか笑顔を作った、笑えているのか分からない。口元がひくついているのが分かる。
「ぬしさま…私は小狐丸と申します。新しきぬしさまは…この小狐になにを命じて下さいましょうかね?」
小狐丸と呼ばれる彼の口元がにこりと笑った。しかし敵意がむき出しで今なにかを発言すれば喰われる気がするとゾクゾクする。すると私の頬にすれすれで刀がピタリと当たった、今度はなんだ。私はまだ死にたくはないぞ。と血の気を引きながら上を見上げる。水色の髪が揺れて無表情で見下ろされた。後ろでは青い表情で「いち兄止めて!」と叫ぶ男の子達が必死に抱き着いて止めに入っていた。
「っ…主など、必要ない!沢山だ!何度弟達を苦しめればいい!」
「………」
「貴方が引き継いでなにになる!また弟達を破壊するつもりか?目の前で…苦しんで行った弟達を見るのはもう嫌だ!助けられるのは審神者である主殿、だけだというのにっ…」
悲痛な叫びが暗い本丸を映したように思えた。震えている自分を止めようと、彼の刀を握り締める。血が滲みぽたぽたと床を真っ赤に染め上げ、周りの刀剣男士達は酷く驚いていた。