第10章 願の先に
進んでいくと動物たちの声もします。ここならきっとお兄様もさみしくはないはず。
隊員さんたちの手によってお兄様のお墓がたてられました。
皆さん私に気を使ってくれたのか、今は私とお兄様だけの空間になりました。
「お兄様、よかったですね。きっとここならさみしくはないです」
今朝までは私と一緒に会話をしていたお兄様の声をもう聞くことは出来なのですね。
「私は感謝しています。お兄様のおかげで私はまたここに戻ってくることができました。」
いきなり海軍に連れて行かれたて戸惑っていた時、私には本当のことを話してくれました。
マリージョアでも私の話をたくさん聞いてくれました。
「お兄様には感謝の気持ちしかありません」
どんなに伝えたくても伝わらない私の言葉はもう永遠にお兄様に届きません。
お兄様は本当にもうここにはいらっしゃらないんですね。
今まで流れなかった涙がぽろぽろと溢れてきました。
「うぇっ…、く…うぅぅ…」
一度溢れてきた涙は止まることを知らず、私はただその場で泣き続けるしかありませんでした。
するといつの間にかそばに来ていたエースが、後ろからフワッと私を抱きしめてくれました。
「エース…」
未だに私の目からこぼれる涙はエースの手によって拭われました。
「アリス。俺たちはアベルのおかげでまた会うことができた。あいつは精一杯妹を助けると掲げていた自分の信念を貫き通したんだ。あいつの覚悟を無駄にするな」
お兄様の信念。
確かに、お兄様の気持ちを無駄にするわけにはいきませんよね。
私はまだ流れていた涙を拭い少し無理やりに笑ってみせた。
きっと涙によって目元も腫れてしまって不細工な顔をしているんでしょうね。
「ありがとう。お兄様」
まだまだ立ち直れないかもしれないけれども、少し心が晴れたような気がしました。