第9章 末っ子の想い
どうやらお父様は先に帰ってしまわれたそうです。
私たちは二人で帰ることになりました。
正直に言ってしまえば少しホッとしました。
お父様と一緒に居れば何を聞かれるか分かりませんから…
「リアムさん、私ここで暮らしていける自信がありません」
こんな世界が存在するなんて知らなかった。
もしアベルさんが幼いころの私を連れだしてくださらなかったら私は気に入らなければ簡単に人を撃ってしまう人間になっていたかもしれません。
その事実にゾッとしました。
「帰りたい…」
それは思わず出た本音。
「私は白ひげ海賊団に帰りたいです。エースやお父さんたちに会いたい!」
私の目からは涙が出ていました。
何も言わずにそっと私を抱きしめてくれるリアムさん。
「必ず帰すよ。こんなところはアリスには似合わない」
その日はリアムさんの腕の中で思いっきり泣いてしまいました。
翌日、私はお父様の下を訪れていました。
結婚式前日ですが、昨日のことで婚約を解消したいと伝えるためです。
「お父様、誠に勝手ながら私はエリオットさんとの婚約を解消させていただきたいです」
私の前で優雅にお茶を飲んでいたお父様はピクリと藩王をして私の方を睨んできました。
「お前は何を言っている!!そんなことを許すわけがないだろう!!」
お父様は顔を真っ赤にして私を怒鳴り散らしました。
「次そんな愚かなことを言ってみろ、お前の大切なものはすべてこの世から消えるだろう」
それは遠回しに白ひげ海賊団の皆のことを言っているわけで、私のせいでみんなが犠牲になってしまうと言っているのでしょう。
結局私は婚約を破棄することは出来ませんでした。
部屋に戻ってしばらくすると、リアムさんがやってきてくださいました。
「アリス…」
おそらく私の見張りを頼まれたのでしょう。
暖かいココアをもってきてくれました。
彼の顔はどこか安心したような表情でした。
「いい情報が入ってきたよ」
それは一筋の希望の光。