第9章 末っ子の想い
「明日の式のときに白ひげ海賊団がここへやってくる」
それは以前もなんとなく聞いていた皆さんの進路。
なぜかリアムさんだけその情報が入ってきているようでした。
「前は企業秘密だとか言って何も伝えてなかったな。俺は白ひげ海賊団と組んでいるんだ」
明かされた事実はあまりにも私の都合のいいことでした。
「いったいいつから…?」
「アリスをさらいにきたあの日だよ」
そこからリアムさんはこと細やかに説明してくれました。
白ひげ海賊団を襲撃したあの日、リアムさんはまだ公にされていない毒ガスを使いました。
勿論何の対策もしていなかった白ひげ海賊団は成すすべなく倒れてしまいましたが、実際に使われていたガスはリアムさんによって少し強力な睡眠ガスに置き換えられていたのです。
全滅だと思われていた白ひげ海賊団は無傷で難を逃れたのでした。
その後アベルさんは海軍の目を盗んで白ひげ海賊団と連絡を取り合っていたようなのです。
リアムさんはお父さんに自身のことを含むすべてのことを話しお互い協力するようになったと言います。
そこで海軍でありながら天竜人でもあったリアムさんは白ひげ海賊団を誰の目にも止めることなくここまで導いてきたのだというのです。
全ては私のためでした。
海軍の立場もあるため最初から歯向かうわけにはいかなかったのだと語ってくれました。
私はその話を聞いて心が温かくなりました。
確かにここに来てまだ二日ほどしかたっていないのにもう何か月もいるような感覚とその分大きなショックと絶望のようなものがありました。
しかし、そんな中でも私を助けようとひそかに動いてくれる人たちが私にはいたのです。
「ありがとう…」
感謝しきれないほどの愛情を私はみんなからもらっていた。
やっぱり私は何をしてもみんなの下へ帰りたいと思います。
「明日の式の最中におそらく白ひげ海賊団はやってくる。俺も微力ながら援護する。アリスはここから逃げることだけを考えろ」
そういうリアムさんの目はものすごく真剣な表情そのものでした。