第9章 末っ子の想い
リアムさんとおしゃべりしていると時間が過ぎるのはあっという間で、例の婚約者さんに会いに行く時間となりました。
正直に言って、会いたくはありません。
元より天竜人の方の印象はよくありませんし、ましてや私は今まで自分が天竜人という身分だったとは知らなかったのでどのようにっしたらいいのか分かりません。
ちらりとリアムさんを見ても、今はお父様もいるので視線は合わせてくれません。
「さぁ、ついたぞ」
目の前には相変わらず大きな扉。
この奥に私の婚約者さんがいらっしゃるのですね。
大きな扉が開き中に入ると一人の男の人がいました。
「おぉ!なんて美しい!あなたのような方が私に嫁いでくださるなんて!」
「あ、ありがとうございます」
席に着いたのと同時に出されたお茶を飲みながらお話しすることになったのですが、お相手さんはお父様とずっと何やら難しいお話をしています。
ただ、二人の会話が進んでいくうちにリアムさんの顔が怖くなっていくので良くないことを話しているんだということだけは分かりました。
「さて、ここからは二人で話すといい。私は席を外すとしよう」
まるでお見合いのときに言う定番の言葉を残してお父様は部屋から出ていきました。
リアムさんも外で待機するように言われて出て行ってしまいました。
流石に気まずいです。
「アリス宮はどんなドレスを着たいですか?」
「え、ドレスですか…?」
いきなりそんな話をされると思っていなかったのでびっくりです。
「式の日程はすでに決まっているので早急にドレスも作らないといけませんからね」
「え…?」
式の日程が決まっている?そんなこと一言も聞いていないのですが…。
「いや~本番の明後日が楽しみですね。こんなきれいな方と結婚できる私は幸せ者ですよ」
明後日?明後日と言いましたか?
私の頭の中はいっぱいいっぱいになってしまってオーバーヒートを起こしてしまいそうです。
「し、失礼します」