第17章 ひねくれ花言葉
そして、ドキドキしながら、今日、私は彼の部屋へと向かった。
彼は、多忙な人だと聞いたことがあり、私が花を届ける時には、何時も彼はいない。
今ではそれに感謝しているくらいだ。
机の上の花瓶を見れば、そこには、なにも無かった。
思わず、その場にへたり込む。
「ど…して…」
やっぱり、私があの花を選んだから。
浮かれて、調子に乗りすぎたみたいだ。
これは、花を使った文通は、もう終わりということなのだろうか。
目の前が真っ暗になる。
そのまま、私はふらふらと店に戻った。
終わり、もなにも、私との関係なんて、客と店員というもので、特別な関係なんて、始まってすらいなかった。
次の日、いくら憂鬱でも、経営者としては、仕事をしないわけにもいかず、今日も私は花を届けに行かなくては。
今日は当然、空っぽの花瓶に、花をいけなければならないのだろう。
想像してはため息が止まらない。朝早くから選んだ花、それはクローバー。
意外なことに、クローバーにも、花言葉がある。
懲りない私は、もはや自棄のように、
『私のものになってください』
という意味のクローバーを選んだ。
「…なんて、往生際の悪い。」
彼は、こういうのは嫌いそうだ。
…だけど、玉砕するなら、しっかりと気持ちを告げたい。
覚悟を決めてクローバーをつかんで、彼の元へと走る。
扉の前で少し怖じ気づいてから、思い切ってドアを開けて、彼の机の前へ。
花瓶には、赤いチューリップの花が。
花言葉は『愛の告白』
混乱するも、もしかしたら、私の次に、そういう人がいて、もう私はこの仕事をクビにされたのでは、と、悪い想像が渦巻く。