第1章 キスから始まる恋の話(牛島若利×白布姉)
翌朝、いつも通りの時間に起き、いつも通り朝食を作り、いつも通りの一日が始まろうとした筈だったのに、隣から物凄い爆発音が聞こえた。その物凄い爆発音に驚いた私は、慌てて外へと出て、牛島君のインターホンを鳴らした。するとすぐに牛島君がドアを開けた。
「今の何!?」
「料理をしていた。」
牛島君の部屋の方からは嗅いだことのない、なんともいえない、不快感のある臭い。牛島君を押しのけ、勝手に部屋へと上がった。キッチンの方を見ると、レンジから煙があがり、何かが部屋中に飛び散っていた。
「…何これ?」
「ゆで卵を作っていた。」
まさか、卵を茹でるんじゃなくて、電子レンジで加熱した?卵をレンジで温めたら爆発するって、常識でしょ、普通。てか、なんで洗ったであろうお米は、泡だらけなのだろうか。切られたであろう野菜はなぜほぼ野菜そのままの大きさなのだろうか。
「ゆで卵知らないのか?卵は栄養価が高い。体にいい。」
その目の前に広がる光景に唖然とする私に、ゆで卵の説明を始めた牛島君は馬鹿なのだろうか。いや、白鳥沢出身なんだから馬鹿ではない筈。勉強は出来る筈。
「自炊初めてなの?」
「そうだが。」
初めてにしても酷すぎる。授業に家庭科だってあっただろうに。今時小学生だって、卵ををレンジで温めないし、お米を洗剤で洗ったりしない。包丁だって使える。ていうか、こんなに壊滅的に料理が出来ないのに、よく自炊しようと思ったものだ。
「君、馬鹿なのかな。」
「勉強はどちらかと言えば好きな方だが。」
うん、ダメだ。話が通じない。欲しい答えが一切返ってこない。
「もう、いいや。家来て。」
「なぜだ?」
「いいから。」
そう言って半ば強引に牛島君を部屋から連れ出し、自分の家へ招き入れた。