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夢をみせて 【おそ松さん 短編】

第1章 『夢を見せて』


 今年も今年とて、相変わらず彼氏のいないクリスマス。浮かれた街並みに展開されているイルミネーションが眩しくて、顔を上げていられない。節電とか環境とか、大口叩いていながら、結局は経済活動優先なこの街。やっぱり地方公共団体は、電気会社と裏で手を結んでいるに違いない。いや、どうでもいいけど。どうせ恋人もいないのだから、思い切って残業でもしようと職場に残っているところに、キモイ上司がやってきて、「彼氏とデートしろ」「クリスマスに恋人と過ごすのは良いものだ」等と言ってきた。何がだよ、お前も大概の歳なのに、結婚相手どころか恋人もいないらしいじゃねぇか、とかいう口汚いツッコミが口から漏れるのを何とか抑えて、仕方なく職場を後にした。

 そして今、私は時間を若干持て余してしまい、帰宅中に電車を途中下車し、少し大きなショッピングモールのある駅を、ひとりぶらついている。寒い。流石冬だ。寒い。冬だから、寒いのだ。そう、冬だから。


 特に目的もなく、ショッピングモールをぶらつく。色々な商品が、かわいい売り子さんたちの手で売られている。世間はクリスマス。クリスマス商戦の真っ只中だ。カップルが行き交い、笑い声が弾けている。こんなに寒いのに、なぜ外へ出かけているのか……。いや、私もなのだけど。もうすぐ、食べ物とかは割引され始める時間だ。何か買って帰って、それを家で温めて食べる……とかいうのも、悪くないなぁ、なんて考えていたその時。ふと視界に、革ジャンとサングラスが飛び込んできた。

……。…………。イルミネーションが光っているとはいえ、夜なのになんでサングラス?それに、丈の短い革ジャンでは、寒いと思うけど……。あ、まぁ、いいや。社会には様々な人間が暮らしている。私が気に留めることでもない。それに、今日はクリスマス・イヴだ。あんな格好の男性でも、誰かと待ち合わせしているのかもしれない。…………私と違って。



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