第8章 再会、そして
幻影旅団によるクルタ族の虐殺。
当時、ルカは7歳だった。
蝋燭の灯りの中、1人ホームに置いてきぼりで、ひたすら皆の帰りを待ったのを覚えている。
「ただいま」と言って帰ってきた彼等が、むせかえる程の血の臭いを纏っていたのも。
殺しの痕跡を残すことも、感じさせることも稀なのに、とルカには不思議だった。
だが、すぐに合点がいった。
血の臭いがして当たり前だった。
土産だ、とクロロが差し出したモノ。
それは、
あかい、あかい、緋の眼ー…
…クラピカがクルタ族だなんて。
一族を、家族を、友人を、
1人残らず殺されて
どんなに悲しんだだろう。
どんなに恨んだだろう。
自分だって、誰かにクモが殺されたら。
そう考えるだけで全身総毛立つ。
クラピカには、何があっても目的を果たす、という覚悟がある。
大切なモノを奪われた者にしか持ち得ぬ覚悟が。
そんなクラピカの覚悟に触れた瞬間(とき)、人生最大の岐路に立たされている思いがした。
クラピカか、
それともクモか、
どちらを選ぶのか。
クラピカと知り合い、仲間だと思える程に時を過ごしていなければ、考える余地などなかったに違いない。
しかし、ルカは出会ってしまった。
ゴンもキルアもレオリオも、もう知り合う前の自分に戻ることは叶わない。
戻りたいとも思わない。
初めて出来た友達で、仲間で。
一緒にいると楽しくて、世界が広がる思いがする。
皆は、もう大事な存在になっている。
……選べない。
大切な家族も、大事な仲間も、
もう自分の身体の一部なのだから、どちらかを選ぶなんて、無理。
だから、ルカは決めた。
それが、クラピカに見せた決意の笑顔だ。
『選ばない』それが私の決意。
クラピカか、クモか。
仲間か、家族か。
そんなの私は選ばない。
選ぶなんて無理。
それなら、選ばなくても良いように、なんとかして見せる…!
大事な人達を、私が守って見せる。
必ず!
ルカの決意を乗せて、飛行船は悠々と進む。
この先の空に何が待っているのか、
少女の旅はまだ続くことになる。
第8章 再会、そして ー完ー