第4章 夢と思い出
***
「ちょっと止まって」
彼女がいきなりそう言った。私は文句など言わずに、大人しく立ち止まる。すると、彼女は手を伸ばして、私の頭に触れた。
「桜、ついてる」
彼女は手を揺らした。薄紅色の花びらがひらひらと落ちる。彼女はそれを躊躇うことなく踏み潰した。
「ん、ありがと」
私はお礼を言うと、再び歩き出す。彼女の隣に並んで。目指す場所は小学校だ。
アスファルトの上に、たくさんの桜が落ちていた。頭上からも、たくさん降ってくる。
「桜、散ってるねぇ」
私は、桜の木を見上げながら呟いた。相変わらず、それはひらひらと舞う。
「ね。まだ卒業式終わってないのに」
一足早いんだよ。
そう言って彼女は笑う。
枯れちゃうよねぇ。
そう言って私も笑う。
「そう言えば、卒業式で将来の夢言うじゃん?あれ何にするの?」
彼女は私に尋ねる。私は少しだけ考えて、答えた。
「…決まってない」
「言うと思った」
じゃあ聞くなよ、なんて私は言わない。それよりも、やっぱり分かるんだね、という気持ちでいっぱいだった。
そっちはどうなの、と私は彼女に尋ねる。
「あたし?あたしはねー…」
私は彼女の目を見つめる。期待した。彼女の答えに。すると、彼女はこう答えた。
「×××××」
***