第40章 回復
ルナの病室の前に来ると、ヒルゼンは周囲に誰もいないのを確認して、素早くルナの病室に綱手を招き入れた。
ベッドの上では、眠ったままのルナが呻き、大粒の涙を零していた。
明らかにカカシよりも苦しそうなルナに、綱手は痛ましげな顔をした。
「……先生、この子は………」
「…………儂の遠縁じゃ。それより、早く治してやってくれ。見ていられぬ。」
ヒルゼンはその言葉通り、ルナから顔を背け、帽子のつばを引っ張った。
「………はい。」
綱手はそう言うと、ルナの額に手を当て、治療を開始した。
綱手の懸命の治療にも関わらず、ルナはなかなか目覚めず、綱手もヒルゼンもルナの影分身も焦った。
(……この子…………なかなか治らない………それだけダメージが大きかったということか………でも………
…………必ず治してみせる!)
(……レイ、いや、ルナ…………やはりお前とイタチの幻術は最悪の組み合わせだったか………
…………頼む、綱手……どうかルナを治してくれ………ルナは儂の命の恩人なのじゃ………)
(あわわわ…………マズイ……本体相当ダメージ受けてるっぽい…………もしかしたら、すぐには活動できないかも……)
しかしそのうち、綱手の必死の治療のお陰か、だんだんルナの表情が穏やかなものになって来た。
そして、ルナが小さくうーんと唸って、瞼を開けた。
「……!よかった………」
「レイ!………回復してよかった。」
綱手はホッとして手を引っ込め、ヒルゼンも緊張が解けたようだった。
「?」
ルナはしばらく、訳がわからないという様子でいたが、ヒルゼンの顔を見ると、表情が変わった。
「……あ………うっ………」
紅い瞳に、新たな涙が溜まる。
その表情は幼子のようにあどけなくて、身体はカタカタと心許なく震えていた。
「……っ……」
そして、シーツの上に、ぱたぱたと雫が落ちた。
ルナのそんな様子に、綱手もヒルゼンも、呆気にとられていた。