第37章 暁の二人組、襲来
任務が終わって、ルナ達が火影邸に報告に行った。
戦闘不能となったヒルゼンは、次の火影が就任するまで、今まで通り火影としての職務を全うすることになっていた。
「任務完了、ご苦労じゃった。儂からも、知らせがある。
カカシが倒れて、木ノ葉病院に入院中だ。」
ヒルゼンの言葉を聞いて、サクラは、えっ、と驚いた表情をした。
「カカシ先生がやられちゃうなんて……一体誰が……」
「………それについては、答えられぬ。」
口を噤むヒルゼンを、サクラは不安そうに、サスケは訝しそうに、ルナは全てを悟った顔で見ていた。
「………とにかく、行きましょう。」
サクラがそう言うと、サスケとルナは頷き、三人は木ノ葉病院に向かうことにした。
ルナが火影室から出る瞬間、ヒルゼンの方をチラリと見ると、ヒルゼンはなんとも言えない顔をしてルナを見ていた。
「火影様、大丈夫ですよ。」
ルナはどこか不安げなヒルゼンに朗らかに笑いかけると、サスケとサクラを追って、火影室を後にした。
ヒルゼンはルナが去った後も、ルナの笑顔が頭から離れなかった。
(ルナ…………大丈夫なものか……お前が一番、辛い筈なのに………
……しかも、カカシを倒した相手は、イタチなのだぞ……ルナがそれを知ったら、どんな顔をするだろう……)
ルナはヒルゼンを不安から救い出したくて笑ったが、逆効果だったようだ。
その無邪気な優しさが、ヒルゼンの胸の奥をざわつかせていた。
(ルナは、儂の消えかけていた命を、救ってくれた………だが、儂は……
………ルナに重荷を背負わせてばかりで………お前に、笑いかけてもらう資格なんぞありゃしないのじゃ………)
ルナの優し過ぎる笑顔は、幻影となって、いつまでもヒルゼンを苦しめた。