第36章 奇跡と後始末
「いやー、レイがこんなに料理が上手だとは思わなかったなぁ。」
カカシが食後のお茶を飲みながら、しみじみと言った。
「あはは、喜んでいただけて、幸いです。
まあ、料理ができるようになったのは、ここ一カ月の成果なんですけどね。」
ルナはうっかり、自ら墓穴を掘った。
「ここ一カ月?そう言えばレイ、本戦までの間、どこに行ってたんだ?」
カカシが、聞き忘れていた旅の行き先について訊いて来た。
「あー、簡単に言うと、昔の友人の家に、泊まりに行ったと言いますか……ちょっとした里帰りです。
……そこが料理屋で、修行しながら、厨房のお手伝いしてたら、色々覚えました。」
ルナは心の中で口を滑らせた自分に猛反省しながらも、スルリと嘘を吐いた。
「そうかぁ……里帰りか。」
カカシはルナの過去について、詮索しないようにしようと思っていたため、それ以上掘り下げなかった。
「そうだ、レイ………俺も気をつけようと思うが、お前もナルトの食生活のこと、少し気にしてやってくれないか?
あいつ、いつも一楽のラーメンかカップラーメンばっかり食ってるんだよ………
俺だと、野菜を差し入れてやることくらいしか出来ないからな……」
カカシは少し遠い目をして、ルナに頼んだ。
「はい。わかってますよ。これからは、ナルトをなるべく夕飯に誘おうかと思ってます。」
ルナはカカシの依頼を快諾した。
「そうか、レイ、済まないな。」
「いえいえ。お気になさらず。」
(私のしていることに比べれば、どうってことないし。むしろ、罪滅ぼしとしては全然足りてない。)
ルナは七班のメンバーの世話を焼くことを、自分の罪悪感を多少和らげるものとして捉えていた。
二人はお茶を飲み終わり、カカシは帰ることにした。
「じゃあな、レイ。今日はご馳走様。おやすみ。」
カカシはいつものマスクの下から、ルナに別れの言葉をかけた。
「おやすみなさい、カカシ先生。今度の待ち合わせには、遅れないで下さいね!」
「は〜いはい。じゃ!」
カカシはそう言うと、ルナの家から出て行った。
ルナはカカシを見送ると、手早く風呂に入り、眠りについた。