第36章 奇跡と後始末
翌日の午後、ルナはヒルゼンを訪ねた。
ヒルゼンは意識は戻っていたが、腕が動かせないこともあって、入院中だった。
ルナがヒルゼンの病室の前に行くと、やはり暗部の見張りがいた。
「……あのー……」
「……む。お前、何者だ?」
「ええと、皇レイです。火影様にお会いしたいのですが………」
「皇レイだと?………良いだろう、入れ。火影様にお前を通すよう言われている。」
「はあ……どうも………」
コンコン
「火影様、失礼します。」
ルナは病室のドアをノックし、ヒルゼンの病室に入った。
(結界・波動吸収!)
そして、盗聴防止の結界をかけた。
ヒルゼンはルナが入って来たのを見るとゆっくりと起き上がった。
「レイか……待っていたぞ。説明してもらおうか。」
ヒルゼンはそう言って、動きが鈍い両腕を、微かに持ち上げた。
「あ〜、なんていうか……」
ルナはどこから説明して良いかわからず、口籠もった。
ヒルゼンは歯切れの悪いルナに、一抹の不安を覚えた。
「………まさか儂は大蛇丸の腕すら封印できなかったのか?
でなければ、儂が今生きておる説明がつかん………」
「いえいえ、そういう訳では無くてですね……」
ルナは慌ててヒルゼンの憶測を否定した。
「では、どういうことなのだ?」
ルナはヒルゼンが見逃してくれそうも無いのを悟って、正直に話すことにした。
「実は、大蛇丸が結界から出た後、俺は"肉体に魂を繋ぎ止める術"を使って、死神と火影様の魂を引っ張り合いました。
結果、火影様の魂の大半を繋ぎ止められましたが、死神に一部を持って行かれました。
その影響で、腕が動かせないんですよ。」
ルナは驚くヒルゼンに、淡々と説明した。
「魂を、肉体に繋ぎ止める術だと………レイ、お前は一体………」
「……さあ?まあとにかく、大蛇丸の腕は、ちゃんと封印されてますから、その点についてはご安心を。
それより、火影様、大切な話があります。」
ルナはそれ以上追及されたくなくて、話題をずらした。