第32章 予選
コンコン
「なんじゃ?」
「火影様、カカシです。お訊きしたいことがあって参りました。」
「………よかろう。入れ。」
ヒルゼンは、カカシが訊きたがっていることを、すぐに察した。
「……火影様、皇レイとは、何者なのですか?」
「カカシよ………そう訊いてあの子からは何と返ってきた?」
「俺はただの皇レイだ、と………」
「そうじゃ。その通りじゃ。あの子を信じろ。あの子はお前や班員に危害を加えることは決してせぬ。
………それどころか、守ってくれているだろう?」
「しかし、火影様……さっき大蛇丸が来て、レイは自ら呪印を受けた、と……」
「わかっておる。あの子はそういう子じゃ。仲間を庇っての事なのであろう?」
「はい。大蛇丸の話では、サスケの代わりに……」
「そうであろう。だから、お前があの子の身辺を探る必要はない。あの子はいい子じゃ。
優しくて強くて、班員として何も問題は無いはずじゃ。」
「それはそうですが………では、何故レイは、人を殺す事に対する躊躇いが、あんなにも無いのですか?」
「それはじゃな……」
ヒルゼンはそこで少し考え込んだ。
(ルナの奴、サスケを守るのに必死なのは仕方がないが、もうちょっとどうにかならんかのう……
………何か適当に言い訳しておくか……ルナがなんとか口裏を合わせられる範囲で……………)
「……それは、レイが両親を亡くしたせいではないかと思う。
レイは両親の死に責任を感じていてな…あの子のせいでは無いのに……
……だから、自分の仲間だと思っている人間は、どんな手段を使っても、確実に守ろうとしているのじゃ。
………………たとえ敵を皆殺しにしてでも。」
「そうですか……」
(レイはそれで過剰なまでに仲間を守ろうとするのか……
血の雨に降られても、死体の山を築いても………ただそれだけを考えていたのか…また失うのが、何よりも怖くて……)
カカシは少し納得した。