第32章 予選
「レイ………お前は何者だ?」
カカシは真剣な表情で訊いた。
ルナは周りからの質問のワンパターン加減に呆れた。
「何者って……俺は皇レイだって、何回言えばわかって下さるんですか、カカシ先生?」
「………そう言う意味じゃない……さっき、大蛇丸が俺のところに来て、お前一人で戦争を始められると言っていた。
お前がサスケに執心しているともな。皇レイっていうのは、偽名なんじゃないのか?お前は本当は誰なんだ?」
ルナはこれを聞いて、いつか大蛇丸にお仕置きしてやろうと思いながらも、微笑を崩さなかった。
「何をおっしゃってるんですか、カカシ先生。大蛇丸に踊らされるなんて、先生らしくもない。」
「………レイ………はぐらかすな。俺を見ろ!」
カカシはルナの肩と手首を壁にグッと押さえつけて、顔を覗き込んだ。
「っ……カカシ先生、俺は、皇レイです。それ以上でもそれ以下でもありません。」
ルナは突然乱暴に扱われたことに少々困惑しつつも、カカシの目を見て言った。
だがカカシは、それを信じてはくれないようだった。
「お前が俺を信用出来ないのはわかる。でもな、レイ、俺はお前を………」
何かを言い始めたカカシをルナが遮る。
「…………カカシ先生、もう、手遅れです。」
「……………え?」
「もう、あの頃には戻れないんですよ…………」
ルナは幸せだったあの頃を思い出して、目頭が熱くなった。
そのままルナの目から、涙がはらはらと零れた。
カカシはいきなり泣き出したルナを前に、追及する気が失せてしまった。
「…………どうしたの、レイ……?」
「………だからっ!…グスッ……もう、手遅れなんですよ……俺は、もう後戻り出来ないんです。
…………カカシ先生に出来ることは何もありません。お願いします、俺のことは放っておいて下さい。」
ルナはそう言うと、動けないでいるカカシを残して、瞬身でその場を去った。