第20章 平和の影に犠牲あり
ヒルゼンは、火影邸から、アカデミーから走り去って行くサスケを見ていた。
(サスケには悪いことをしたのう……
…………儂は結局、うちは一族に何もしてやれんかった。
……責任をイタチ一人に背負わせて…………)
ヒルゼンは他に何か手は無かったものかと、今でも悩み続けていた。
(木ノ葉の平和のために、イタチが、サスケが、ルナが犠牲になったんじゃな………)
「…っはぁ…っはぁ…っはぁ…………」
サスケはアカデミーを飛び出したその足で、演習場にやって来て、修行を始めた。
「火遁・鳳仙花の術!」
サスケは印を結び、口から火の玉を吐き出した。
動きをコントロールしようとしたけれど、どうも上手くいかない。
でも、多少はできるようになったサスケは、火の玉の一つを指先に動かして、それを見つめた。
(姉さん、俺、まだ完璧じゃないけど、出来たよ。姉さんが教えてくれた術。)
昔、『頑張ったね!』と言って頭を撫でてくれたルナの手を、サスケはボーっと思い出した。
その様子を、ルナの影分身が姿を隠して見ていた。
「……………サスケー、火遁使いながらボーっとしちゃダメだぞ……………
………ま、しょうがないか。いざとなったら私が消火すれば良いし。」
影分身はサスケの気持ちも知らず、そんなことを呟いた。
もともと、ルナ本体が他人の感情に鈍感なので、影分身に人の感情に敏感になれ、というのが、無理な相談だ。
サスケは日が暮れるまで修行を続け、疲れ切って帰って行った。