第2章 結婚式日和。
どーやたっら無視できるかなぁなんんて考えたって、無駄なわけで。
「もしもし」
『あ、もしもしニノ?俺だけど』
…知ってるわ。
『今日の仕事終わりで、事務所寄ってくれる?ちょっと渡すものがあってね』
「はーいわかった。翔さんもう知ってるんだよね?」
『うん、言ってある。だからお前、逃げんなよ?』
電話の向こうから、くっくっていう笑い声が漏れ聞こえてきて。
「もう…潤くん笑わないで!」
この人は社長だけど、潤くんと呼ばれるのをものすごく喜ぶ。
『んじゃニノ、待ってるよー』
最後にハートマークでもついてきそうな、
あまぁい声音で電話を切られた俺は。
「何?ニノ、腰砕けちゃったの?」
潤くんこと、社長の声に絶句して何も言えないだけなのに
大野さんにからかわれてしまった。
「ニノかわいー!耳真っ赤!」
「おっさんうるせぇ…」
いつもより心なしか饒舌な大野さんに、
釘をさすように低い声で言えば、楽屋の外から翔さんの笑い声が聞こえてきた。
…社長、俺のこと好きだもんなぁ…。
なぜか俺は、ものすごく好かれてしまっていて…
なぜかは知らないけどね。